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(プロ野球を「研究する」編No.16)セイバーメトリクス入門⑫~「スモールベースボール」は、やらない方が良い!? バントと盗塁の有用性を確かめる!!「盗塁編」~

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 こんにちは!! と申します。当ブログにお越しいただき、誠にありがとうございます。

 今回は、

プロ野球を『研究する』編」

の第16弾として、

セイバーメトリクス入門⑫~『スモールベースボール』は、やらない方が良い!? バントと盗塁の有用性を確かめる!!『盗塁編』~

をお送り致します!!

 

  

「研究する」編で使用される、”奇跡の野球の分析手法”「セイバーメトリクス」とは!?>

 

 セイバーメトリクスとは、野球の戦略・戦術や競技者(選手)を、統計学すなわち「科学」を用いて分析・評価するという、今までにない斬新な手法の事です。野球の本場・アメリカMLBでは、この手法を導入したオークランド・アスレチックスが、資金難による低迷から脱して常勝球団になった事等もあって、セイバーメトリクスの有用性が認められており、この手法を用いた球団運営が主流となっています。

  野球の常識を覆し、弱小球団を常勝球団に変貌させる等の数々の奇跡を起こした、いわば”奇跡の野球の分析手法”であり、これを知れば、あなたも「超」野球通です!!

 

 

<はじめに>

 

 皆さんは、「スモールベースボール」はお好きでしょうか?

 日本の野球関係者及びファンは、いつの時代からか、バント盗塁を中心に得点を奪いに行く「スモールベースボール」を好む傾向が強く、特にバントは「自己犠牲の象徴」として神聖視されています。

 

 しかし!! そのバントや盗塁は、有用性が高い戦術とは言えないのです!!

 実は、当サイトでも、よく打者の成績を紹介する際、盗塁数をカットしています。これにはちゃんと訳があるのです(気付いていただいた方がいたら、よく読んでいただいているという事で、とても嬉しいです!!)。

 今回は、前回の「バント」に続き、「盗塁」の有用性を検証します!!

 

 

<盗塁成功の利得は小さい!?>

 

 今回も、実際のプロ野球の過去のデータを用いて、バントの有用性を確かめたいと思います。

 

 こちらの書籍(勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス)の12Pによると、盗塁を成功させても、1回につき、チームの得点は平均して「0.17点」しか増えないのです!!

 

 これも、前回説明した、「得点期待値」を基に計算されたものです。

 得点期待値とは、「その状況から攻撃を行った場合、イニング終了まで平均して何点が入るか」というものです。

 

 例えば、0アウト1塁から2盗し、成功させたケースを見てみましょう。

 先述の書籍の5Pの、得点期待値の表(データの対象は、2004~2013年のプロ野球)を基に、「0アウト1塁」の状況の得点期待値と、「0アウト2塁」の状況の得点期待値を比較すると、以下の様になります。

 

・0アウト1塁:0.821点

・0アウト2塁:1.040点

・上昇した得点期待値:0.219点

 

 同様に、「1アウト1塁」と、「1アウト2塁」の状況の得点期待値を、比較してみましょう(1アウト1塁から盗塁成功したケース)。

 

・1アウト1塁:0.499点

・1アウト2塁:0.687点

・上昇した得点期待値:0.188点

 

 同様に、「2アウト1塁」と、「2アウト2塁」の状況の得点期待値を、比較してみましょう(2アウト1塁から盗塁成功したケース)。

 

・2アウト1塁:0.214点

・2アウト2塁:0.321点

・上昇した得点期待値:0.107点

 

 いかがでしょうか!? ほとんど得点期待値が上がっていない、すなわちチームの得点を増やしていないという事が分かりますよね!!

 

 盗塁は、走者が1つだけしか先の塁に進まず、走者が増える訳ではありませんし、得点が入る訳ではありません(ほとんど成功しないホームスチールは別)。

 盗塁の利得は、意外に小さいものなのです。

 

 

<盗塁は、失敗時の損失も考慮しなければならない!!>

 

 盗塁は、プロの世界では、平均でも70%くらいしか成功しません

 実際に、2017年のプロ野球を見ても、セ・リーグの盗塁成功率の平均は、69.7%パ・リーグの盗塁成功率の平均も、70.1%です。

 つまり、失敗した時の損失も考慮しなければなりません

 

 盗塁を失敗すると、アウトカウントが1つ増え、その上走者が1人いなくなってしまいます。

 前回の記事で説明した通り、野球は3アウトを取られるまで攻撃できるスポーツですから、アウトにならない事は重要です。

 アウトカウントが増える上、走者が1人いなくなるのですから、盗塁刺(盗塁「死」は正式でない)すると、大きな損失を被るのは、想像に難くありません

 

 先述の書籍(勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス)の12Pによると、盗塁を失敗すると、1回につき、チームの得点は平均して「0.4点」も減るのです!!

 成功してもチームの得点が「0.17点」しか増えないのに、失敗するとチームの得点が「0.4点」も減るというのは、明らかに盗塁は「ハイリスク・ローリターン」な戦術と言わざるをえません。

 

 この「-0.4」点というのも、先程の章と同じ様に、「得点期待値」を基に計算されたものです。

 

 先程の章と同様に、各ケースを見ていきましょう。

 まず、0アウト1塁から2塁に盗塁し、失敗したケースです。

 先述の書籍(勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス)の5Pの、得点期待値の表(データの対象は、2004~2013年のプロ野球)を基に、「0アウト1塁」の状況の得点期待値と、「1アウト走者無し」の状況の得点期待値を比較すると、以下の様になります。

 

・0アウト1塁:0.821点

・1アウト走者無し:0.242点

・減少した得点期待値:0.579点

 

 同様に、「1アウト1塁」と、「2アウト走者無し」の状況の得点期待値を、比較してみましょう(1アウト1塁から盗塁刺したケース)。

 

・1アウト1塁:0.499点

・2アウト走者無し:0.091点

・減少した得点期待値:0.408点

 

 同様に、「2アウト1塁」の状況の得点期待値を、見てみましょう(2アウト1塁から盗塁刺し、イニングが終了したケース)。

 

・2アウト1塁:0.214点

・盗塁刺後:0点(イニングが終了するため)

・減少した得点期待値:0.214点

 

 いかがでしょうか!? 先程の章の、成功時の得点期待値の比較と比べると、大きな損失が出るという事が分かりますよね!!

 

 

<「0.17」「-0.4」という数字から分かる事>

 

 これまでの事をおさらいすると、盗塁は、成功させても、チームの得点が「0.17点」しか増えず、失敗すると、チームの得点が「0.4」点も減るという、「ハイリスク・ローリターン」な戦術であるという事です。

 

 それでも、今一つ「0.17点」「-0.4点」という数字が、大きいものなのか、小さいものなのかしっくり来ない方も多いと思います。

 

 そこで、具体的な数字を当てはめ、様々な計算をしてみましょう!!

 

 成功すれば+0.17点、失敗すれば-0.4点という事は、以下の計算式より、盗塁成功率「70.2%」で、チームの得点が「増えも減りもしない」という事が言えます

 

0.17x=0.4(1-x)←成功の利得と、失敗の損失が同じになるように設定

0.17x=0.4-0.4x

0.57x=0.4

x≒0.702=70.2%

 

 つまり、成功率が「70.2%」を超えれば、チームの得点が増え、「70.2%」を下回れば、チームの得点が減るという事です!!

 

 お気づきの方も多いと思いますが、2017年のプロ野球を見ると、セ・リーグの盗塁成功率の平均は、「69.7%」、パ・リーグの盗塁成功率の平均も、「70.1%」というお話をしました。

 つまり、盗塁で得点を増やすどころか、「盗塁で得点を減らしている」チームもあるという事になるのです!!

 以下は、2017年の12球団の、「盗塁で増やした得点」の一覧です。

f:id:baseballsabermetrics:20171101040620j:plain

 

 やはり、盗塁でチームの得点を減らしているチームが、半数の6チームにも上りました!!

 

 さらに、得点を増やせているチームも、全チーム「10点未満」しか増やせていないのです!!(当然、「1年間を通じて」盗塁で10点未満しか増やせていないという事です!! )

 

 念のために、計算例として、2017年、12球団で最も盗塁成功率が高かった、ロッテの計算式を紹介しておきます。

 ロッテの盗塁関係の成績は以下の通りです。

 

・盗塁(成功数):78個

・盗塁刺:24個

・盗塁成功率:76.5%

 

 成功時「0.17点」失敗時「-0.4点」ですから、計算式は以下の様になります。

 

78×0.17-24×0.4

=13.26-9.6

=3.66(点)

 

 一覧表の通り、盗塁で増やしたチームの得点は、1年間で僅か「3.66点」だけとなります!!

 

 仮に、チーム全体で、盗塁成功率80%で、160個の盗塁を成功させたとしても(盗塁刺は40個)、以下の計算式の通り、11.2点しか、チームの得点は増えません(当然、上の表の通り、この様な成功数・成功率を達成するのは、ほぼ不可能ですが)。

 

160×0.17-40×0.4=27.2-16=11.2(点)

 

 これで、盗塁の有用性が、いかに低いかという事が分かっていただけたと思います!!

 

 

<1点を争う場面での盗塁の価値>

 

 1点を争う場面での盗塁の価値はどうでしょうか。

 

 確かに、1点ビハインドの9回2アウト1塁で、打者に長打が見込めないため、盗塁を決めなければ、負けてしまうという状況等、一部の限られた場面では、リスクを背負って盗塁をする価値はあるとも言えます。

 このケースで盗塁刺すれば試合終了ですが、2アウト1塁で打者に長打が見込めないため、もし盗塁をしなければ、結局点が取れないまま、試合終了となる可能性が高いとも考えられます。

 

 実際に、2013年のWBC日本vs台湾戦で、阪神鳥谷敬選手が同様のケースで盗塁し、井端弘和氏(現巨人コーチ)の中前打で生還して、試合を振り出しに戻したという事がありました(結局その試合は、日本が延長戦を制して勝利)。

 井端氏は、長打力がある打者とは言えず、そして実際に打ったのは単打で、しかも井端氏の後続のソフトバンク内川聖一選手が凡退し、イニングが終了しているため、もし、鳥谷選手が盗塁していなければ、得点が入らず、そのまま敗戦となっていた可能性が高いです。

 

 ただし、こういった場面は、1試合の中でも、非常に限られた場面です。

 盗塁もバント同様、限られた場面でしか、有用な戦術とは成り得ないのです。

 そういった場面で、走者が鈍足だという状況を迎えた時は、代走を出せば良いと考えられます。

 

 なお、盗塁に似た、「1つ先の塁を狙う走塁」に関しても、盗塁と同じ事が言えます(利得は小さいが、アウト時の損失は大きく、限られた場面でしか、有用なプレーとはならない)

 

 

<前回と今回のまとめ>

 

 盗塁は、チームの得点を、1年間に10点すら増やしません

 そして、盗塁が有用な戦術に成り得るのは、一部の限られた場面だけです

 下位チームが、よく「機動力野球」を標榜して、上位球団に立ち向かおうとしますが、この様な盗塁をベースにしたチームづくりも、バントをベースにしたチームづくり同様、不合理な戦略と言わざるをえません

 

 バントは、チームの得点を減らす戦術であり、盗塁も、場合によってはチームの得点を減らす戦術に成り得ます(少なくとも、劇的には得点を増やしません)。

 そして、どちらも有用な戦術と成り得るのは、一部の限られた場面のみです。

 

 盗塁やバントの上手さを重視して、守備力と打力のどちらも優れているとは言えない選手を、わざわざレギュラーとして起用し続けるのは、非常に不合理な選手起用法と言わざるをえないのです!!

 

 

 

 以上2回に渡って、「スモールベースボール」の有用性についてお話ししてまいりました。

 バントも盗塁も、チームの得点を減らす戦術になったり、一部の限られた場面でしか有用な戦術にならないため、「スモールベースボール」は、有用性が低い戦略であるという内容でした‼

 いかがだったでしょうか!? 野球に詳しい方もそうでない方も、驚いたり、感動したり、楽しんでいただけたのなら、筆者としてこれ以上の喜びはありません‼

 次回の記事もお楽しみに‼

 

 

 

当ブログの記事を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!!